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消費税増税:なぜ公明党は合意したのか
2012/06/23


遠山清彦です。公明党は、去る6月15日金曜日の夜遅くに、民主党、自民党との修正協議を経て、消費税増税法案と社会保障改革の修正案に合意しました。これに対し、率直に評価する声と、「公明党は増税に反対だったはずでは?」という立場から、変節したとの厳しいご批判を受けています。今日は、私個人の見解をここで述べたいと思います。

野田政権が国会に当初提出した消費税増税法案および社会保障一体改革関連法案については、公明党は反対の立場を表明しました。それは、手法があまりにも乱暴であり、展望がない中身であったからです。ただし、私たちは与党時代の政策、そして野党になってからの「福祉社会ビジョン」の中でも、社会保障制度の安定財源確保のため、条件付きで消費税増税の必要性は認めてきました。

公明党「福祉社会ビジョン・全文」 http://www.komei.or.jp/policy/various_policies/pdf/socialsecurity_policy.pdf

そこで、本年の国会論戦では、石井政調会長を先頭に、「消費増税の5条件」と、「低所得者対策の強化」の合計6条件について、民主党政権の対応を繰り返し問いただしました。ところが、私自身も質疑に立って実感しましたが、政府の対応は全くダメで、公明党としては「このままでは、とうてい賛成できない」という立場を堅持してきました。

しかし、その後、会期末間際になって3党修正協議が始まり、事態は劇的に変化しました。一言でいえば、民主党が、公明党の6条件について、大幅に譲歩したのです。まず、公明党が最も強く求めていた「実現不可能と判明した民主党の新年金制度の撤回と、後期高齢者医療制度廃止方針の撤回」について、閣議決定の撤回は拒否したものの、これからの3党で協議・合意した内容を尊重することを民主党は明確に認めました。つまり、今の時点で「新年金制度の旗」は降ろさないものの、3党で別の年金改革に合意したら、そちらを尊重する、と明言したわけです。

これは、事実上、民主党案の撤回を意味します。なぜなら、公明党も自民党も、最低保障年金7万円と年金制度(3制度)には断固反対であり、そんな新年金制度で合意するはずがないからです。

また、逆進性が強い消費税の増税に伴う低所得者対策も強化し、法案に明記する方向になりました。政府の当初案には、「簡素な給付措置」しか書かれていませんでしたが、今回の修正協議で公明党の意見が反映され、「軽減税率の導入」も選択肢に加わりました。軽減税率とは、いわゆる「ぜいたく品」と「生活必需品」で税率を変える制度で、欧州諸国では幅広く導入されている低所得者対策です。そして、公明党の主張により、税率8%段階から必ず低所得者対策を行うこととし、それをしないで増税できない仕組みになっています。

さらに、公明党が強く懸念していた「社会保障改革置き去りの増税先行」路線も明確に破棄させました。具体的には、増税の前提条件として、「社会保障改革の施策が実行されていること」と「景気回復を確認できること」を明確にしました。さらに、景気回復に関連して、公明党が現在掲げている「防災・減災ニューディール」を踏まえた成長戦略を実施する方向性もはっきりさせました。

これ以外にも、低年金者対策を消費税増税までに実施することの確約、公明党の公約である年金受給資格期間の10年間への短縮、民主党の「総合こども園」の撤回と、現行の「認定こども園」拡充への変更、自動車重量税と取得税の抜本的見直し、など、公明党の主張があらゆる分野で反映された3党合意となりました。

このように、今まで反対していた「理由」について、大幅な改善が見られたので、賛成した、ということです。私は率直に、第3党でありながら、ここまで公明党の主張を実現させた交渉責任者の石井政調会長と斉藤税調会長の努力に敬意を表したいと思っています。

合意が成立した翌日の全国紙は、すべて社説等で合意を評価しました。また、「決められない政治」からの脱却の第一歩という声を多くありました。今、日本が直面している少子高齢化、財政難からくる安定的財源の不足、制度疲労に苦しむ社会保障制度、などの難問を考えれば、いつまでも与野党で不毛な対立を繰り返している局面ではありません。私たちは、野田内閣を信任する立場にはありませんが、社会保障は日本国民一人一人の人生に関わる重大課題です。どの政党が与党になっても、国民の安心を確保することが国会の最大の使命の一つと考えれば、今回の合意は評価すべき、と私は考えています。

それでも、公明党の本当の闘いはこれからです。医療にしろ、年金制度にしろ、詳細な設計はこれからの与野党協議や国民会議での議論にかかってきます。私たちは、ぶれることなく、今後の闘いにも国民目線で一致団結して臨んでいきたいと思います。

<遠山清彦 デイリーメッセージより>

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