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5月度「御書講義」 立正安国論
2021/05/25


世界を結び、未来を創る――堂々と確信の対話を!

 創価学会公式ホームページ「SOKAnet」で配信(5月31日まで)されている、森中教学部長の5月度「御書講義」を、上下にわたって掲載します(抜粋・編集)。教材は「立正安国論」です。民衆の幸福と世界平和を実現するための要諦を学んでいきましょう。(は5月30日付4面に掲載の予定)


<はじめに>
 創価学会は、今、「立正安国」「立正安世界」を掲げて行動しています。世界各地のSGI(創価学会インタナショナル)メンバーと話すと、皆が立正安国の法理を真剣に学び、「立正安国」即「世界平和」の実践を力強く推進していることを実感します。
 とりわけ、この一年、世界中がコロナ禍の状況にあって、メンバーは、分断と格差が広がる危機の中で、“人間尊敬の哲学を復権し、人と人との絆を強め、安穏の世界を築いていく立正安国の実践が今こそ必要だ”と決意を固め、行動に移しています。まさに、立正安国の世界的連帯が築かれる時代になりました。
 「広宣流布は世界同時進行」という時代の中で、御書や池田先生の教学著作・指導は、世界共通で学ばれています。日本の私たちも、御書と学会指導を信心の源泉にして、納得と信頼の励ましと対話に勇んで挑戦していきましょう。
 ◇
 「立正安国論」は、文応元年(1260年)7月16日、日蓮大聖人が39歳の時、当時の実質的な最高権力者・北条時頼に提出された「国主諫暁の書」です。
 大聖人の御生涯は、この「立正安国」の実現を目指した激闘の連続であったともいえます。
 この「立正安国」の実践を受け継ぎ、民衆の幸福と世界平和の実現を目指して、現実変革に挑戦している団体が創価学会です。
 仏法者は、現実社会の変革に目を向けていかなくてはなりません。今回の拝読範囲は、まさに、民衆の苦悩に満ちた国土を、仏国土に変えていく日蓮仏法の本義が示されている内容となっています。
 続いて、題号の「立正安国」の意味を確認します。
 「立正」とは、正法の流布を基盤に、生命の尊厳、人間尊敬の哲理を人々の胸中に確立し、社会の基本原理にしていくことです。社会の価値観の基盤に、生命尊厳の思想を定着させていくことが重要です。
 社会を構成する一人一人の意識が変わり、法華経が示している、生命尊厳の思想が定着する方向へ、社会の精神土壌を変革していくことが、私たちの「立正」の実践です。
 「安国」とは、社会の繁栄と平和の建設です。これには、民衆が「三災七難」に苦しむことのない安穏な国土の実現も含みます。まさしく、この現実の娑婆世界に仏国土を建設することです。
 「立正安国」を考える上で大切なのは、「立正」と「安国」の関係です。
 「立正」とは「安国の根本条件」であり、「安国」とは「立正の根本目的」であるといえます。
 ここでいう「国」とは、「一国」に限定されるものではありません。郷土から世界に至るまで、民衆が住む国土を指します。
 創価の師弟は、「この世から悲惨の二字をなくす」との信念で、民衆一人一人の幸福、そして平和で安穏な社会の実現を目指して戦ってきました。この精神こそ学会精神です。


<御文>
 汝早く信仰の寸心を改めて速に実乗の一善に帰せよ、然れば則ち三界は皆仏国なり仏国其れ衰んや十方は悉く宝土なり宝土何ぞ壊れんや、国に衰微無く土に破壊無んば身は是れ安全・心は是れ禅定ならん、此の詞此の言信ず可く崇む可し(御書32ページ14行目〜17行目)


仏国土を築く

 「立正安国論」は、北条時頼を想定した客と、大聖人を想定した主人との十問九答の問答形式で展開されています。最後の十番目の質問は、客の決意にもなっているので答えはありません。ここで拝読するのは、第9段の答えの部分です。第9段の質問でも、客はすでに納得して、正法の実践を決意しています。
 それに対して、主人は、経文に照らして、「自界叛逆難」と「他国侵逼難」が目前に迫っており、客に対していち早く行動を起こすようにと強く迫ります。
 5月度「座談会拝読御書」の範囲でもある御書31ページ16行目からの箇所で、主人は“戦争が起これば、国家や生活の基盤は破壊されてしまう。その時には、もはや逃れるところはない”と述べます。そして結論として、「汝須く一身の安堵を思わば先ず四表の静謐を禱らん者か」(御書31ページ)と強く訴えます。
 大聖人は、自身の「安堵」(安心)を考えるなら、あなたはまず、「四表の静謐」(自分の周囲、社会や国家、世界の安穏、平和)を祈るべきではないのか、と仰せになっているのです。
 その後、主人は、謗法厳誡の姿勢を確認した上で「あなた(客)は早速、ささやかな信仰の心を改めて、速やかに、実乗の一善に帰依しなさい」(同32ページ、通解)と述べます。
 「実乗の一善」とは、成仏へと導く真実の教え、つまり法華経という唯一の正しい教えのことです。
 法華経こそが「根本善」です。なぜなら、全ての人々の仏性を開き、絶対の幸福境涯を築き上げることを可能にする教えだからです。
 「実乗の一善」を選び取れば、私たちの住む現実世界が、そのまま永遠にして不滅の仏国土となります。
 「実乗の一善に帰せよ」が「立正」で、次の御文が「安国」になります。
 「そうすれば三界は皆、仏国である。仏国が、どうして衰えることがあるだろうか。十方の国土は、ことごとく宝土である。宝土が、どうして壊れることがあるだろうか」(同ページ、通解)
 「三界」とは、仏教の世界観で、地獄界から天界までの六道の迷いの衆生が住む世界です。「宝土」とは、功徳に満ちあふれた国土のことです。法華経如来寿量品第16では、娑婆世界が仏の常住する寂光土すなわち、宝土であることが明かされました。これが「娑婆即寂光」の原理です。
 仏国、すなわち宝土は、衰えたり、壊れたりすることはありません。永遠に崩れることのない常住の仏国となるのです。この仏国土を、衆生が苦悩する現実の世界で実現していくのが法華経の特徴であり、大聖人の立正安国の仏法です。
 ゆえに、「国土が衰微することなく破壊されることがなければ、身は安全であり、心は動揺せず安定しているだろう」(同ページ、通解)と仰せなのです。大事なことは、民衆の安穏のための「立正安国」です。反対に言えば、「立正安国」の目標は民衆の幸福にほかなりません。
 「四表の静謐」が実現することで、「一身の安堵」も、かなっていきます。
 一人の人間革命から始まり、一国の宿命転換、全人類の宿命転換が実現していく。その中に、一人一人の成仏もあります。


未聞の社会変革

 法華経の「娑婆即寂光」から始まり、立正安国に至る思想は、大聖人御在世当時の宗教界にあっては想像も及ばない画期的な思想です。
 だから主人は、「これらの言葉を信じて敬わなければならない」(同ページ、通解)と、信心をもって受け止めていきなさいと述べているのです。
 現代にあっても、立正安国は未聞の社会変革の実践です。創価学会の社会的展開、社会参加について、多くの識者や人々が正当な評価をする時代に入りました。
 池田先生は「私たちの対話は、人間の力を復興する戦いです。私たちの対話が、社会を変え、世界を結び、未来を創ります。私たちの対話には、希望があります」(『勝利の経典「御書」に学ぶ』第22巻)と教えられています。
 私たちは確信を込めて、堂々と、立正安国の対話を力強く繰り広げていきたいと思います。

<聖教新聞 2021年5月25日付より>

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